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20080803

逆チェビシェフ・フィルタ理論

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この記事 逆チェビシェフ・フィルタ理論は,次の記事の続編として書かれています.チェビシェフに関する基礎を踏まえて いますので,次の記事も参照してみてください.
  1. バターワース・フィルタを考える(参考)
  2. チェビシェフ・フィルタ理論
  3. チェビシェフ・フィルタの特徴
  4. 高次ローパスフィルタ伝達関数からハイパスフィルタをつくる

逆チェビシェフ・フィルタとは?

8次 逆チェビシェフ・フィルタ

8次 チェビシェフ・フィルタ

いきなりですが,逆チェビシェフ・フィルタと通常のチェビシェフ・フィルタの周波数特性を表示してみました.逆チェビシェフ・フィルタ は上図(上),遮断域に振動があり,透過域がバターワース特性に近いことが特徴です.通常のチェビシェフ・フィルタは,上図(下)のよう にゲイン・リップル振動の位置が透過域に振動があり異なります.また,遮断域では,バターワース特性に近づきます.

逆チェビシェフ・フィルタの理論
以前,記述したチェビシェフ・フィルタは,チェビシェフ多項式を伝達関数に応用したフィルタです. ここでは,このチェビシェフ多項式を応用したもうひとつのフィルタである,逆チェビシェフ・フィルタを解説します.

まず,最初にチェビシェフ多項式をおさらいしておきます.チェビシェフ多項式は, Cn(x) = cos nθx=cos θとしたとき三角関数の加法定理から導き出されたものです.
C0(x) = 1
C1(x) = x
C2(x) = 2x2 -1
C3(x) = 4x3 -3x
C4(x) = 8x4 -8x2 +1
C5(x) = 16x5 -20x3 +5x
C6(x) = 32x6 -48x4 +18x2 -1
  ・
  ・



さて,以前解説したチェビシェフ・フィルタは,このチェビシェフ多項式Cn(x)を 次式のように伝達関数の周波数応答に応用しました.

    ---(1)

Cn(x)は,多項式ですので, x>1で急激に大きくなります.よって(1)式は,ω>1で分母が急激に大きくなり 伝達関数としては,ω>1で減衰域になります.

ここでは,このチェビシェフ多項式Cn(x)の特徴を逆に 次のように利用します.

    ---(11)

(1)式に対して(2)式は,チェビシェフ多項式Cn(ω)を逆数にしています ので,ω≤1で 0 ≤ Cn(ω) ≤ 1 ですので, Cn(ω)=0の場合には,伝達関数としては零点となります.また, ω>1でCn(ω)は急激に大きくなり,伝達関数|G(jω)|としては, 1に収束します.

(2)式の設定根拠は,(1)式の設定根拠と共通する部分が多いので,ここでは割愛します.(1)式の設定根拠の解説は, こちらを参照してください.

よって,(2)式に示す逆チェビシェフ・フィルタ伝達関数は,ハイパス・フィルタとなります.(逆チェビシェフ・フィルタのローパス・フィルタは後述します.) まず,この(2)式の逆チェビシェフ・ハイパス・フィルタの極と零点を求めていきます.

(11)式は,次のように変形できます.

    ---(11)

ここで,分母に着目すると,(1)式と同じであることがわかりますので,極は以前求めたチェビシェフ・フィルタの極がそのまま使えます. よって

 --(10)
m=1,2,3・・・n



ωとCn(ω)を求めます.両者は, 以前のチェビシェフ・フィルタ理論で求めていますので,引用します. 既読の方は,飛ばしてください.
冒頭のチェビシェフの多項式の定義に与えているω = cosθとCn(ω) = cos nθ の形を変えます.cosθおよびcos nθの状態では,1より大きい状態に対応できませんので,cosを含むことのできる等価式に置き換える のです.まず,cos θは,オイラーの関係式から
  
ですが,ここでA=σ+jθとして置き換えます

   σ=0において,この式が成立

|σ|>0において,ωが1より大きい状態に対応させます.この発想ちょうど,フーリエ変換からラプラス変換に対応させる術(すべ) に似ていると思った次第(余談)でした.すると上式は

    ---(2)
途中cosの加法定理を導入しています

つづいてCn(ω) = cos nθを上記と同様に変形します.

    ---(3)


これら(2)(3)式は,実数を示す項と,虚数を示す項に分解されています.さてこれを踏まえて,(12)式から零点を求めていきます. 零点の条件は,[分子]=0ですから,

  εCn(ω)=0  ---(12)

この式に(3)式を導入します.
    ---(13)
この式から,左辺の実部および虚部が0であることから.
  
まず,上式ではExponentialの指数関数が0になることはありませんから,cos nθが0ということになります.ので極におけるθの条件が 求められます.
    ---(14)
m=1,2,3・・・n

つづいて下式では,(14)式を導入するとsinは -1 か 1 になります.ので
  

この式をσについて解くと,
  σ=0  ---(15)

チェビシェフ・フィルタ極の導出にずいぶん似た展開でしたね.つづいてsとωの関係についても,前記事より引用. 既読の方は,飛ばしてください.
ωの式を伝達関数 sの式に変化させます.一般に 伝達関数からフーリエ変換を行う場合に,s = jωとして簡易的に行う方法があります.ここではその方法を逆に行います.

  ω = s / j = - js

これを(2)に代入すると

    ---(7)

(7)より,(15)(14)式を導入して零点を求めます.

    ---(16)
m=1,2,3・・・n

(10)(16)式から,逆チェビシェフ・ハイパス・フィルタの伝達関数を求めることができます.
  

上図は,8次逆チェビシェフ・ハイパス・フィルタの周波数応答です.このフィルタは,チェビシェフ多項式をチェビシェフ・フィルタに 対して逆数で利用していますのでフィルタの特性は,ハイパス・フィルタになります.では,ローパス・フィルタは,といますと, 伝達関数に代数的手法を用いて,ハイパス・フィルタをローパス・フィルタに変換する方法があります. こちらを参照ください.

■n次 逆チェビシェフ・フィルタを構成する一次・二次フィルタのζとωc
※次数とゲイン・リップルを与えて[計算]ボタンをクリックすると,構成する一次,二次フィルタのωcとζ が 計算され列挙され,その条件に応じた極がグラフに表示されます.フィルタ全体としてのカットオフ周波数は,1[rad/s]の 正規化フィルタです.
次数 n: (2 ≤ n ≤ 100)
遮断域ゲイン振動上限 dB
フィルタタイプの選定:

二次フィルタ:
ωc[rad/s] ζ
零点
 


零点

逆チェビシェフ・フィルタの伝達関数を求める
フィルタの次数:
カットオフ周波数:Hz
遮断域リップル上限:dB
フィルタタイプの選定:



[記事URL] http://okawa-denshi.jp/blog/?th=2008080300
カテゴリー:フィルタ(20)