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20090223

無限長平行電路の相互インダクタンス

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読者からの質問です.

【20090223】質問

配線を2つ並べた場合の話です。
配線に電流を流すことによって、磁界が発生すると思います。発生した磁界が隣接する配線に及ぼす影響(誘導起電力?)はどのような 式で表されますか?

仮に 2本の無限長の平行直線電路間の相互誘導について という条件で解説してみたいと思います.もし条件がずれていると思われたら 再度投稿ください.

[条件]
  平行電路の間隔:d[m]
  電路長:L[m]
 ※条件とする電路長Lは,無限長の長さから相互誘導を対象とする部分の長さとします.



上図は,画面に対して垂直の方向に電路A,Bが2本平行に置かれた状態です.ここで,Aにのみに電流I[A]が流れるものとします. その時の,電路Aの周囲に分布する磁束は次式の関係にあります.(無限長直線電路のつくる磁束密度はこちら参照

  

上式における a は,電路Aからの距離です.この式で示す,磁束密度 Bの分布を上図に示しています.ここで,電路A,B間の 相互インダクタンスを考えます.相互インダクタンスは, 一次回路に流れる電流のつくる磁束が,二次回路に対して鎖交する磁束です.詳しくは,↑リンク参照.

よって,2本の無限長の平行直線電路間の相互インダクタンスは,一次回路をAとすると二次回路Bに鎖交する磁束は,上図で言うAを 中心にA−B間を半径とする円の外側であることがわかると思います.

よって,Bへの鎖交磁束は,

  

ということになります.この鎖交磁束Φは,相互インダクタンスと等価です.∞の相互インダクタンスでは,現実にそぐわないですよね. 実際,我々が電子回路として電路を構成する場合には,必ず電流の復路があるんですね.常に回路は環状になりますから.ですから, 現実にそぐわない回路を計算した結果が,やはり現実にそぐわない解として導き出されている訳です.



ここで,画面と垂直にもう一本電路Cが復路として存在する場合を考えます.

[条件]
  電路A,B間の間隔:d1[m]
  電路B,C間の間隔:d2[m]
  電路長:L[m]
 ※条件とする電路長Lは,無限長の長さから相互誘導を対象とする部分の長さとします.

  

解き方は,前半の方法を踏襲して,電路Aと電路Cの影響を重ねの理によって合成しています. この鎖交磁束Φは,AC電路とB電路との相互インダクタンスと等価です.仮にこの相互インダクタンスをMとすると電路Bに 励起される誘導電圧は

  M=Φ
  

となります.



[記事URL] http://okawa-denshi.jp/blog/?th=2009022300
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