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電流のつくる磁界

図1-5-1 のように導体に電流を流したとき,その電流は空間に対して磁気的な力を作用します.このような場を磁界といいます.磁界の向きは電流の方向に対して垂直に右回転方向につくられます.これをアンペアの右ねじの法則といいます.

図1-5-1 において電流I が∆l の電路でつくる磁界の大きさはつぎのような関係が知られます.

この関係はビオ・サバールの法則といいます.式中の∆Bは磁界の大きさを示す量で磁束密度(1) といい単位はテスラ[T] を使用します.μ0 は真空の透磁率といい4π×10-7[H/m] です.これについて詳細は磁性体のセクションで説明します.式1-5-1 を全電路長で積分して無限長直線電路がつくる磁束密度を求めます.

すると

式1-5-3 が得られます.磁束密度は直線電路からの垂直方向の距離a[m] に反比例し,電流I に比例します.


(1)磁束密度についての解説

無限長の直線電路に流れる電流の一部がつくる磁束密度を示したのが式1-5-1の関係式です.この式を電路の全長で積分することで,この電路のつくる磁束密度を求めることができます.ここでは式1-5-2 から式1-5-3 の変化を解説します.まず式1-5-2 中のrl について図1-5-1 より関係を示します.

式1-5-2 の距離l に関して-∞ 〜 +∞[m] の範囲での積分を,角度θ によって0〜π[rad] の範囲の積分に変換します.またrl の変数もθ に関する式に変形し統一します.すると

式2をθ で微分してつぎの関係を得ます.

つづいて円電流のつくる磁界を考えます.図1-5-2は円電流のつくる磁界を示しています.図に示すは磁束密度ベクトルを示す指力線で磁束(2)といいます.

円電流の中心の磁束密度B はビオ・サバールの法則(式1-5-1)円周で積分する式1-5-4

で与えられます.図のように円の中心における磁束密度は円電流のどのポイントからも垂直になるので,θ はπ/2(直角)となります.すると

円電流の中心の磁束密度は式1-5-5 となります.円電流内の磁束密度はビオ・サバールの法則(式1-5-1)に示すように電路との距離の2乗に反比例するため,電路に近づくにしたがって大きくなります.そのため円電流内の磁束密度の分布は中心が円内ではもっとも小さくなる特徴があります.




【質問】2008/02/13
電流によって磁界はなぜ発生するんですか?


【回答】2008/02/14

電流と磁界は,考え方として別々に考えずに同一の物理事象と考えていいと思います.

電流をマクロ的にみれば,電荷の運動になります.この現象をある定点から,時間当たりの移動電荷量(すなわち電流)として観測するか,時間当たりの電界の変化量(すなわち磁界)として観測するかという視点の違いによるものです.

時間当たりの電界の変化量は,磁界の大きさに比例する要素です.場(空間)は,変化を起こそうとする事象に対して,一定の状態を維持しようとする反作用が働きます.そのため電界の変化が,場で起きようとすれば,反作用の電界の変化が発生します.

この作用,反作用を力学的に観測したものが磁力(磁界)です.




【質問】2008/12/02

導体に電流が流れると 右ねじの法則により その導体の周囲に磁界が発生します。その発生した磁界(←磁束?)を 磁性体でさえぎったら 電流値が低下する と聞いたことがあります。

非磁性体だと 電流値は低下しない とも聞きました。なぜですか? 易しく 説明 お願いします。



【回答】2008/12/02

電路には多かれ少なかれ必ずインダクタンスが存在します.インダクタンスの大きさは,電路の形状や電路周辺の透磁率によります.仮に電路近くに磁性体を置くとその電路周辺の透磁率が変化しますので,電路全体のインダクタンスが変化することになります.

ご質問の磁界を(真空中で)磁性体でさえぎったらという状態は,前記で言うところの電路インダクタンスの増加につながります.ここで,電路に磁性体を置く状態と置かない状態とがあったとき,両者の物理的特徴の違いは静的にはインダクタンスの大小であると言えると思います.

インダクタンスは,直流電流に対してインピーダンスは0Ωになりますので,動的にインダクタンスを変化させない場合には,電流の変化はないと思います.しかし,ご質問にあるように動的にインダクタンスを変化させた場合には,話が異なります.

ここで電路に,磁化されていない磁性体を近づける訳ですから,擬似的には電路に初期電流0Aのインダクタを直列に挟み込む状態に近いこと(正確には違いますが,イメージとして捉えてください)になっています.そのため過渡的には電源側に対して逆起電圧を発生させます.よって,この電路に電流を供給する系にもよりますが,直流電圧源+定抵抗の組み合わせの電源であれば,ご質問に記載の通り,電流の低下が過渡的に起こり得ます.また,磁化された磁性体を離す時には,逆に電流の増加が過渡的に起こり得るとも考えられます.