20081110
交流回路へのラプラス変換の応用
【20081102】質問
交流回路に対しても,ラプラス変換で解析できるのでしょうか. つまり,ラプラス変換によって,電流を時間依存の函数として記述できるのでしょうか.お願いします.
交流回路に対しても,ラプラス変換で解析できるのでしょうか. つまり,ラプラス変換によって,電流を時間依存の函数として記述できるのでしょうか.お願いします.
次のような一般の信号伝達系を例に考えます.
Vin(s)→ | G(s) | →Iout(s) |
この系は,ある電子回路に電圧Vinを与えたときに,回路上のある電路の電流Ioutが伝達関数で与えられる場合のモデルです. G(s)のシステムに与える信号が,標題の交流回路への適応ということで次式の交流電圧を与えます.
vin(t)=Vp sin ωt --- (1)
(1)をラプラス変換すると(ラプラス変換表1-5参照) 次式の通り
--- (2)
ここでIout(s)は
Iout(s)=Vin(s)G(s) --- (3)
となり,電流の時間関数は(3)の逆ラプラス変換によって得られます.ここでご質問の答えとなり,
→「ラプラス変換によって,電流を時間依存の函数として記述できる」
と書きたいのですが注意すべき点がありますのでもうちょっと解説します.ラプラス関数は,t=0〜∞ の関数を対象にしていますので, 逆変換によって得られた時間関数も,当然 t ≥ 0 の範囲において有効です.ここで求められる時間関数は, 一般の交流回路のように定常状態における関数とは異なります.
G(s)に積分要素が含まれる場合,ラプラス逆変換から得られる時間関数の,t=0 における積分初期値が,0に設定されていることを 知っておく必要があります.さらに系に与える交流波形vinについても理論的には,次のようなものです.
これらを簡潔にまとめると,「交流信号を与えた伝達系システムの逆ラプラス変換によって得られる時間関数は, 交流信号振幅のステップ応答関数になっている」ということです.
例として,次のようなRLC直列の系(バンドパス・フィルタ)について,交流電圧を与えた際の過渡波形を求めてみたいと思います.
Vin(s)→ |
G(s) |
→Vout(s) |
(Voutと電流の関係は,I=Vout/R です.)
この系の伝達関数G(s)は次式の通り
---(4)
(3)と(4)から
Vout(s)=Vin(s)G(s) ---(5)
(5)の具体的な式の展開はしませんが,4次の関数になりますので必ずしも代数的な根を得ることはできず((5)の場合は可能), 逆ラプラス変換によって時間関数の代数式も必ずしも得られません.ここでは,ツールを使って過渡波形を求めていきたいと思います. 各パラメータを次のように設定.
条件:
vin(t)=Vp sin ωt
ω=2π×50[rad/s] (50Hz)
Vp=1[V]
R=1.3[Ω]
L=0.01[H]
C=0.001[F]
バンドパス・フィルタ部の仕様は,
fc=50[Hz]
ζ =0.2
vin(t)=Vp sin ωt
ω=2π×50[rad/s] (50Hz)
Vp=1[V]
R=1.3[Ω]
L=0.01[H]
C=0.001[F]
バンドパス・フィルタ部の仕様は,
fc=50[Hz]
ζ =0.2
逆ラプラス変換による過渡波形は
上の過渡波形は,フィードバック計算ツールによって算出しています. 同ツールを使って上の逆ラプラス変換の過渡波形を求める方法について解説します.
- フィードバック計算ツール(下は抜粋)で次の系を選択
- Gの入力フォームに(2)式の交流信号Vin(s)ラプラス関数を入力(↓の入力例を参考に)
--(2)
※ω=2πf なので周波数→角周波数へ要換算.
- Hの入力フォームに(4)式の伝達関数を入力
--(4)
※R,L,Cの各値を代入した上で各項の値を入力(↓の入力例を参考に)
- 周波数解析,過渡解析 内の”インパルス(G逆ラプラス変換)”チェックボックスをチェック.それ以外のチェックを解除.
すると,下のような感じになっていると思います.
- [計算]ボタンで上記の波形がえられます.
↓の入力例は上記,条件に基づき入力しています.
一応フォームとして機能するようにしています.
[記事URL] http://okawa-denshi.jp/blog/?th=2008111000
カテゴリー:質問と回答(13)
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