トランジスタの構造

これまで,不純物半導体であるN型とP型の組み合わせとしてPとNとを単純に接合したデバイス(ダイオード)について特徴を考えてきました.ここではPN接合の特徴を踏まえ,さらにもうひとつ不純物半導体を接合した,PNPまたはNPNの接合デバイスについて考えていきます.

図3-3-1  NPN接合のエネルギー構造

図3-3-1は,NPNの接合のエネルギー構造を示しています.

N型半導体とP型半導体はドープ物質(不純物)によって電子の分布が異なり,それによってフェルミ準位が両半導体間で異なっています.フェルミ準位は物質中の電子の存在確率50%の電位を示しますので,これらの半導体を接合するとPNそれぞれの半導体のフェルミ準位の電位差は一致します.

このときN型伝導帯の電子はP型伝導帯と比較してエネルギー準位が高く,また,P型の価電子帯のホールはN型価電子帯と比較して低いためN型の電子およびP型のホールはそれぞれエネルギー準位の低い接合対象となる半導体へ拡散(移動)します.

そのときに接合部に形成されるキャリア濃度の低いエリアが空乏層で,さらに接合部の電位勾配が障壁となります.(PN接合について詳細はこちらを参照

ここではNPN構造に外部から電位差を与えたときの特徴を考えます.NPNの構造では電極を3本取り出すことができますが,これまでPNについては触れてきていますので,P極と両サイドのN極との関係には触れず,図3-3-2のようにNPNの外側N型−N型について述べていきます.


図3-3-2  外部バイアスとエネルギー構造

NPNに対する外部バイアスの印可では,センターのPを線対称としてNPおよびPNの順(逆)バイアス印可の直列接続となっているイメージ(NPのダイオードとPNのダイオード直列)として捉えていくと空乏層の広がりがダイオードの特徴を踏襲していますのでわかりやすいと思います.ダイオードの順バイアス印可と逆バイアス印可時のエネルギー構造はこちらを参照(順バイアス逆バイアス).

図3-3-2では,電源負極側の電子はNからPへの僅かな障壁を越えることができずほとんど通電できません.しかしこの僅かな障壁がこのデバイスを捉える上でミソになってくる部分です.

← 戻る  1 2  3 4  次へ →