トランジスタの構造3

前回VCE(コレクタ−エミッタ間の電圧)を0[V]に固定した場合のVBEバイアスに対するトランジスタのエネルギー構造について考えてみました(こちら参照).ここでは,前回使った図3-3-4と同じ系によってコレクタ−エミッタ間に電圧を与えつつ同時にベース−エミッタ間にも電圧を与えたときの特徴を考えます.


図3-3-4 トランジスタのバイアスと特徴

図3-3-4に示すVCEに正のバイアスを与えていきますので,フェルミ準位はエミッタ極のエネルギー準位に対しコレクタ極のエネルギー準位が低くなります.この状態においてVBEにバイアスを与えていきます.

 
VBE エネルギー構造
順バイアス
0[V]  
逆バイアス

表3-3-2 VBEとトランジスタのエネルギー構造

表3-3-2はVCEに正バイアスを与え,VBEに対して順バイアス,0Vバイアス,逆バイアスをそれぞれ与えたときのNPNトランジスタのエネルギー構造を示しています.コレクタ − エミッタ間の電位差(VCE)に注目すればいずれも同電圧が与えられているのでコレクタ極とエミッタ極間のフェルミ準位の差はいずれも同じになります.その上で,エミッタ極に対するベース極のフェルミ準位の電位VBEが上表のようにそれぞれ与えられている様子を示しています.

VBE順バイアス印可では,伝導帯に着目するとエミッタ極からベース極への障壁が低くバイアスされるので,VBEの大きさに応じてベース電流が流れ同時にベース極に電子が流入し電子濃度が上昇します.こうしてベース極に流入した電子はベース極よりもエネルギー準位の低いコレクタ極へ移動が可能となり,コレクタ − エミッタ間の通電が起こります.

このとき,コレクタ − エミッタ間の通電におけるキャリアは伝導帯の電子のみにより行われます.価電子帯についてもVBEバイアスにより伝導帯同様障壁電位は低くホールが存在すればキャリアとなって移動可能ですが,このキャリアとなるホールはN型のコレクタ極より供給されませんのでNPN型については価電子帯のホールによる通電はされない特徴があります.

VBE0Vおよび逆バイアス印可では,エミッタ − ベース間の障壁を電子およびホールのいずれも越えることはほとんどできませんのでエミッタ − ベース間の通電も,エミッタ − コレクタ間の通電もなされません.

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