OKAWA Electric Design

整流2

ダイオードに逆方向にバイアスを与えたときの特徴を考えます.図3-2-7 はPN接合ダイオードに逆方向バイアスを与えた時の空乏層の様子を示しています.


図3-2-7 PN接合と空乏層

空乏層は,PN接合面近くのアクセプタ・ドナーイオンの電子とホールが拡散によってお互いに結合することによってつくられるイオン(キャリア)濃度の小さい領域です.(詳細はこちら参照)この状態に外部から図3-2-7のようにバイアスを与えると,半導体内に電界が生じてN型の電子,P型のホールがバイアスを与えている電極側に移動することによって空乏層が拡大します.

図3-2-8は逆方向バイアスを与えたときのPNそれぞれの半導体と接合部のエネルギー構造を図示しています.外部から逆方向のバイアスが与えられるとフェルミ準位が電位差に応じて高低差が与えられます(詳細こちら).すると図3-2-8のようにフェルミ準位に吊られてN型半導体のエネルギー準位が低くなりP型半導体のエネルギー準位が高くなります.バイアスの与えられていない状態の障壁からさらに高くなります.


図3-2-8 PN 接合のエネルギー構造

そのため,N型の自由電子はP型へ移動するためには非常に高い障壁を越える必要がありほとんど移動しません.これと同様にP型のホールもN型へ移動するためには高い障壁を越える必要がありほとんど移動しません.ただし,N型に極少量含まれるホール,P型に少量含む自由電子(少数キャリア)は,障壁を下る状態となり容易に移動が可能です.

そのため,逆バイアスを与えたときのダイオードは,少数キャリアによって小さな電流を流すものの,少数キャリアの絶対量が少ないため順方向バイアスに比べほとんど電流を流さない特徴があります.

このようにダイオードは与えるバイアスの方向・電圧によって障壁の電位を自在に変化させます.さらにその現象によってダイオードに流れる電流が順方向と逆方向で大きさが変化する特徴があります.このように与えるバイアスの極性によって電流の流れ易さを変化させる機能を整流といいます.

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