整流
図3-2-4 ダイオードの回路図記号と極性
P型半導体とN型半導体の接合構造をもつ電子デバイスをダイオードといいます.ダイオードはPNそれぞれの極から電極を取り出した構造を持ちます.ダイオードの回路記号は図3-2-4のように示されます.P型半導体側の極をアノード,N型半導体側の極をカソードといいます.
図3-2-5 はPN接合の構造をもつダイオードにバイアス(2)(電圧)を与えた様子を示しています.図のようにアノードをプラス,カソードをマイナスにバイアスすることを順方向バイアスといいます.ダイオードに順方向バイアスを与えるとキャリアの拡散によってつくられた空乏層が外部からのバイアス(Vbias)によって拡散電流とは逆向きにキャリアが流入するため縮小します.さらにそれにともない封入電荷の電荷量も小さくなります.
図3-2-5 PN接合と空乏層
図3-2-6はダイオードに順方向バイアスを与えたときの各半導体と接合部のエネルギー構造を図示しています.まず,フェルミ準位の勾配に着目して解説します.フェルミ準位は先述の通り,キャリアのエネルギー準位の平均を示しています.
図3-2-6 PN接合のエネルギー構造
ここでエネルギー準位と電位の関係について先述してますが表3-2-2 に示しおさらいしておきます.
基準電荷[C] | 説明 | 単位 | |
エネルギー準位 | -1.6×10-19 | 電子1個(左記電荷量)あたりの位置エネルギー | eV |
電位 | 1 | 単位電荷あたりの位置エネルギー | V (J/C) |
表3-2-2 エネルギー準位と電位
両者はいずれも位置エネルギーを示す尺度で,基準が電子かあるいは単位電荷かという点が異なります.そのためお互いの関係は比例換算が可能で,比例係数を電子の電荷量(-1.6 × 10-19[C])として容易に求めることができます.比例係数は負であることから物質の電位が大きくなるとエネルギー準位が小さくなり,電位が小さくなるとエネルギー準位が大きくなる特徴があります.
以上のエネルギー準位と電位の関係を踏まえると,外部から各半導体に電位が与えられると半導体内のキャリアのエネルギー準位(フェルミ準位)が電位に応じて変動し,それらキャリアのエネルギー準位の平均を示すフェルミ準位も電位に応じて変動します.つまり図3-2-6 のデバイス端のフェルミ準位高低差は与えられる電位差そのもので,Vbias がエネルギー準位に換算されたものと考えていいと思います.
外部からの順方向バイアスによってフェルミ準位に高低差が与えられると図3-2-6 のようにフェルミ準位に吊られてN型半導体のエネルギー準位が高くなりP型半導体のエネルギー準位が低くくなります.バイアスの与えられていない状態では,障壁が高く存在したためN型半導体の自由電子はP型側へ移動できませんでした.しかし,障壁電位以上の順方向バイアスを与えることによってN型の自由電子はP型への障壁は低く常温の熱励起などによって容易に移動することが可能になります.また,ホールについても同様でP型のホールはバイアスが与えられていないときは障壁があるため移動できませんでしたが,順方向バイアスによって同様の原理でN型へ移動することが可能になります.