OKAWA Electric Design

PN接合

ドーピングによってP型とN型の2種類の不純物半導体をつくることができることを説明しました.主な半導体製品はこれらP型,N型の半導体と真性半導体によって構成されます.そこで,まず半導体製品の基本となるP型半導体とN型半導体の接合について考えます.


図3-2-3 PN接合とエネルギー構造

図3-2-1 はP型半導体とN型半導体の接合について図示しています.同図接合面では,熱などの励起によって生じたキャリアが拡散(1) によってお互いの半導体を行き来することができるため,ホールと自由電子が出会う確率が高くなります.出会ったホールと自由電子は,結合することによって両方とも消滅します.こうしてP型半導体とN型半導体の接合面では拡散によってホールや自由電子(キャリア)が少なくなる領域がつくられます.この領域を空乏層といいます.

空乏層内のホールと自由電子の消滅によってN型半導体側の空乏層では電子を失うことになり,ドナーはプラスに帯電(イオン化)したことになります.また,P型半導体側の空乏層では電子を与えられることになるのでアクセプタはマイナスに帯電(イオン化)したことになります.このようにしてPN接合によって帯電した電荷を封入電荷といいます.この封入電荷がつくられる過程で,P型半導体のホールはN側へ移動し,N型半導体の自由電子はP側へ移動したことになります.

よってP型およびN型の半導体が接合した時,キャリアの移動すなわち電流はP型半導体からN型半導体へ流れたことになります.この電流を拡散電流といいます.

図3-2-2 はP型半導体とN型半導体と接合面における空乏層のエネルギー構造を示しています.空乏層ではドナーバンドの電子がエネルギー準位の低いアクセプタバンドに落ちることによってアクセプタバンドのホールと結合します.すると図3-2-2(空乏層)に示すように多くのキャリアがアクセプタバンドに収納されます.

P型半導体,N型半導体,空乏層のフェルミ準位を図3-2-2 に示しています.空乏層が伝導帯と価電子帯の中心に位置するのに対しP型は価電子帯よりに低く,またN型は伝導帯よりに高く位置します.

ところでフェルミ準位は物質中の電子濃度が50%で存在するエネルギー準位ですので,半導体の場合には自由電子およびホール両方を含むキャリアのエネルギー準位の平均を示しています.物質中の全キャリアのエネルギー準位の平均は,一般にその物質の置かれる電気的な位置エネルギー(電位)に相当するものとして考えることができます.

図3-2-3 はP型半導体,N型半導体および空乏層のエネルギー構造をフェルミ準位を基準に(電位をそろえて)示しています.図のようにPN間にエネルギー差がつくられます.これを障壁といいます.