OKAWA Electric Design

共振型ゲート駆動回路の電力低減とゲート電流制御に関する研究

■シミュレーション

ここでは,本ゲート駆動回路をつかって実際のIGBTを想定してのゲート駆動シミュレーションを行います.シミュレーション対象とするIGBTは三菱電機社製CM600HA-12です.パッケージとしてはシングルのIGBTで600V/600Aの大電力スイッチング用途です.図a-5は,本ゲート駆動回路のシミュレーションモデルです.この回路のシミュレーションをする前に,基準となる通常のゲート抵抗によるゲート駆動回路についてあらかじめ特徴をおさえておきましょう.図a-6はゲート抵抗によるゲート駆動回路のシミュレーションモデルです.


図a-5 共振型ゲート駆動回路のシミュレーションモデル

図a-6 ゲート抵抗による駆動回路のシミュレーションモデル

図a-7 ゲート抵抗モデルによる応答波形

Vp−Vn間電圧条件:
   □0V
   ◇100V
   ▽200V
   △300V
   ○400V

図a-7は,ゲート抵抗を使った通常の駆動回路についてSPICEを用いて過渡波形をシミュレーションしています.このゲート電圧波形からも読みとることができますが,IGBTやMOS-FETにおけるゲート容量は,一般のコンデンサのように充電電荷と電圧が比例しない領域があります.

そのような特性(ミラー効果)は,IGBTのコレクタ・ゲート間に寄生するミラー容量によるものです.ゲート電圧の変化によって,コレクタ・エミッタ間のインピーダンスが変化するために,通常コレクタ電位が変化します.その電圧変化にともなってコレクタ・ゲート間に寄生するミラー容量は,必然的に電荷量の変化によって電圧をコレクタ電位の変化に追随することになります.

IGBTオフ状態からオン状態への変化時(ゲート充電時)は,コレクタ電位が高→低に変化しますのでミラー容量としては,コレクタ側への放電電流が流れます.このときゲート容量にとっても放電となります.つづいて,IGBTオン状態からオフ状態への変化時(ゲート放電時)は,コレクタ電位が低→高に変化しますのでミラー容量としては,コレクタ側から充電電流が流れます.このときゲート容量にとっても充電となります.といった具合に寄生するミラー容量によってゲートに充電しようとすると放電され,ゲート放電しようとすると充電される負帰還が形成されています.

このような特性から,IGBTのコレクタ・エミッタ間に与えられる電圧の大きさがゲート電荷とゲート電圧の関係に大きく影響を与える要素であることがわかると思います.そこで,このシミュレーションではコレクタ・エミッタ間の電圧(図a-5におけるVpVn間電圧)について0V〜400Vの間で(100V刻みで)パラメータ・スイープしてそれぞれ波形を算出してます.