共振型ゲート駆動回路の電力低減とゲート電流制御に関する研究
■動作および原理
図a-1 共振型ゲート駆動によるIGBT駆動ブロック図
ここからは,IGBTのオン/オフ時の具体的なSW1,SW2の動作について説明します.
IGBTを駆動する際の,SW1,SW2の動作を図a-2に示します.IGBTのオン・オフ時にはゲートへの電荷充電と放電の過程があります.まず,IGBTがオフ状態からオン状態に遷移する際のIGBTゲート容量への充電について.SW1のスイッチングによって電流制限しつつゲートへの充電を行います.このときのゲート電流振動,ゲート電圧オーバーシュートについては後述します.つづいてゲート電圧が上昇してくると充電電流が減少し0Aの収束していきます.この状態を経てSW1のベタ・オンの状態とし,IGBTゲートへの充電が完了します.
つぎにIGBTがオン状態からオフ状態に遷移する際のIGBTゲート容量の放電について.SW1をオフとしSW2のスイッチングによって電流制限しつつゲート電荷の放電を行います.放電時についてもゲート電圧の低下とともに充電電流が減少し0Aに漸近するよう収束していきます.この状態を経てSW2をベタ・オンの状態とし,IGBTゲートへの放電が完了します.
図a-2 IGBTの駆動とSW1,SW2の動作
ところで,通常LCの系にパルス状またはステップ状の電圧を与えるとオーバーシュートをともなって振動することはご存知の通りと思います.通常こういった振動を抑制するためにフィードバックによって極消去を行うのが一般的ですが,この回路ではフィードバックさせずに,オーバーシュートなく充電するように設計します.その方法はいくつかありますが,ここではもっとも単純と思われる次の2種類の方法を紹介します.
[方法1]インダクタ電流ILGの不連続領域のみを使用する.
具体的には図a-3のようにインダクタ電流ILGを連続的に通電しないようにSW1あるいはSW2のデューティを設定して1回のスイッチングの度にインダクタ電流ILGが不連続になるよう設定します.しかし,負荷側(ゲート)電位が低い条件の場合には電流の減少スピードが遅いためonデューティを小さく設定する必要があります.そのため,ゲート充電にかかる時間が大きくなる傾向があります.ただし,ゲート容量への充電によってゲート電位の上昇が早い場合,SW1,SW2のonデューティを大きく設定することも可能です.
図a-3 ILgの不連続状態
図a-3のようにILgが断続的に通電する場合には,LC共振をおこすことはありませんのでIGBTゲートに電源B1の電圧以上に充電されることはありません.(リップル成分をのぞく)