共振型ゲート駆動回路の電力低減とゲート電流制御に関する研究
■ハードウェア構成
ここでは,駆動部,駆動安定化電源のワン・モジュール化を視野に入れたIGBTモジュールの小型化を実現するための駆動回路を紹介します.小型化にあたっては次の点を設計のターゲットとしています.
(2) IGBT駆動駆動部の損失電力(発熱)の低減化によって排熱効率を落とし高密度実装化
図a-1 共振型ゲート駆動によるIGBT駆動ブロック図
図a-1のIGBT駆動回路は,シングルIGBTのゲート駆動回路について簡易的なブロック図に示しています.パワー素子の構成としては,通常2素子によるプッシュ・プル構造,4素子によるHブリッヂ,6素子による3相インバータ構成としてモジュール化する場合も多く,そのような場合は基本的には素子数に応じて図a-1に相当するゲート駆動部も素子と同数配置します.ただし,電源B1については,IGBTのエミッタ共有されて結線される場合には,ゲート電源の共有が可能です,さらに電源B1にフライバック電源を採用した場合には当然ですが一次側は共有されます.
つづいて,図a-1の回路について構成に着目して解説していきます.図a-1のIGBTゲートに接続されるインダクタLgについて,通常のゲート駆動回路の場合,この位置にはゲート抵抗が配置されます.ここにインダクタを配置することによって,この回路はインダクタLgとIGBTのゲート容量とからLC回路を構成し,このLC回路にSW1,SW2とそれぞれSWに寄生するダイオードとによって電源B1とIGBTゲート間に双方向昇降圧チョッパ回路を形成しています.
IGBTのゲート充電の過程では,SW1のスイッチングによって電源B1からIGBTゲートへの電力の供給を行い,このときには降圧チョッパ回路が機能します.また,ゲート放電の過程では,SW2のスイッチングによってIGBTゲートから電源B1への電力の供給(回生)を行い,このときには昇圧チョッパ回路の機能が働きます.これによって従来ゲート抵抗による実効損失は大幅に減少させることができ,あわせてIGBTゲート放電時にゲート容量に充電された電荷を電源B1に電力回生することができます.
こうした昇降圧チョッパとしての機能を実現するために,通常のゲート抵抗による駆動回路とは異なるハードウェア上の特徴について示しておきます.
- SW1とSW2が通常のプッシュ・プル回路のように同期して動作せず,SW1,SW2単独でのスイッチング駆動が可能.
- SW1,SW2に並列にダイオードを備える必要がある.(MOS-FETをSW1,SW2に適用する場合,通常MOS-FETにはダイオードが寄生しているのであえてダイオードを設置する必要はありません.)
ところで,図a-1駆動回路には,インダクタLgとIGBTゲート容量によるLC共振回路を形成しています.SW1,SW2の動作によっては共振してIGBTゲートに過大な電圧がかかる場合が考えられます.一般のチョッパ回路の場合には,LC共振系内の電圧あるいは電流を測定しフィードバックして制御上のループをつくって極消去しています.
このゲート駆動回路の場合,極力シンプルな回路構成とすることで汎用性を高めたい狙いがありますのでオープン・ループを選択しています.