磁気回路
磁界と電界は物理特性上類似する多くの特徴があることをこれまでに触れてきました.たとえば,電界中の電流密度の関係と,磁界中の磁束密度の関係は
です.式1-5-73 は導電体中に流れる電流について示すオームの法則と通ずる関係(オームの法則の3次元表示)です.磁界については磁性体中を通る磁束密度の関係を式1-5-74に示しています.磁気に関しても磁束の通路を,電気回路の電流と同様に取り扱うことができます.
これを磁気回路といいます.回路の概念を用いて,磁気回路においてもオームの法則など抵抗計算の法則を適用することができます.
そこで最初に図1-5-28 のような電路および磁路のモデルを使って,式1-5-73に示したパラメータと式1-5-74 に示すパラメータを対比して磁気回路におけるV,R,I に相当するパラメータを求めます.
磁気抵抗について 解説
式1-5-80 の磁気抵抗について検証します.図1-5-28(b) の磁界を無限長ソレノイドによって発生させるものとすると磁界の強さH とソレノイド電流I との関係は
でした.AB 間のソレノイドの巻き数をNとするとN=ln の関係がありますので,AB 間ソレノイドの磁界の強さと電流との関係は次式1-5-82のようになります.
よって Hl = NI |
式1-5-82 |
磁界の強さ:H [A/m] AB間の巻数:N [本] ソレノイド電流:I [A] AB長:l [m] |
式1-5-82についての解説は,ソレノイドのつくる磁界を参照ください.さらに,磁界の強さHと磁束密度Bの関係は,こちらを参照ください.上式のN は磁路AB 間の巻き数です.よってこの磁界より生じる磁束は
式1-5-83 |
磁束:Φ [Wb] 磁束密度:B [T] 面積:S [m2] 透磁率:μ [H/m] 磁界の強さ:H [A/m] AB間の巻数:N [本] ソレノイド電流:I [A] AB間距離:l [m] |
と求めることができます.ここから磁位差をFBA[A]=NI,磁束をΦ[Wb] とし,磁気抵抗をRBA[A/Wb] としたときオームの法則を適用すると
となります.ここに式1-5-83 を代入すると
と求めることができます.ただし上式の磁気抵抗は,磁束密度が均一である条件のもとに成立します.
読者からのご指摘で,Nの単位についての誤記を訂正しました.わかりにくい箇所がありましたので解説を補充しました. ご指摘くださった方,ありがとうございました.