ダイオードのパラメータ
ダイオードのパラメータについて,既に前コンテンツで解説しているものと,メーカのデータシートに記載されている名称,記号についての関係を解説します.
□絶対最大定格
記号 | パラメータ | 備 考 |
VRM | 尖頭逆電圧 | メーカの設定する逆バイアスを印可できる最大値.
一般に,VRMはアバランシェ降伏との関係によって設定されていることが多いようです.逆バイアスを大きくしていくとアバランシェ降伏によって逆流します.整流用途のダイオードにとっては,整流機能を失う電圧となります.低インピーダンスの電圧源に接続される場合,破壊につながるパラメータです. |
VR | 直流逆電圧 | メーカの設定する逆バイアスを直流(連続)的に印可できる最大値.
VRは,メーカの定めるリーク電流(逆電流:IR )の規定に基づき,設定されているパラメータです.本来ユーザ側(セットメーカ側)でVRとリーク電流との兼ね合い関係に基づき設計(設定)の自由が与えられていても良いと思われるのですが,汎用品についてはこの自由度は与えられていない場合が一般的です. |
IFM | 尖頭順電流 | メーカの設定する通電可能な順方向電流の最大値.
一般的に,Tj の大きさに応じてIFMの制限が設定されています. |
IO | 平均整流電流 | メーカの設定する平均順方向電流の最大値.
一般にメーカによって通電条件および系が設定されています. |
IF | 直流順電流 | メーカの設定する順方向電流を直流(連続)的に印可できる最大値. |
Isurge | サージ電流 | メーカの設定する瞬間的に流せる電流の最大値.一般的に通電条件が設定されています.例えば50Hzの正弦波半波. |
Tj | 接合部温度 | PN半導体接合部の温度の最大値.
シリコンダイオードの場合,一般的に150℃に設定されています.Tj を越えて使用すると熱暴走(熱電子によるキャリア増→逆流の現象)や破壊の可能性があるパラメータ. |
Tstg | 保存温度範囲 | 非通電状態でのダイオードの保存温度範囲. |
表3-2-5 ダイオードの絶対定格
□電気的特性
記号 | パラメータ | 備 考 |
VF | 順電圧 | 定められた条件下(Tj等の条件)においてダイオードに順方向に規定の順電流を流したときの電圧降下の範囲を規定しています.
一般的には,ダイオードに与えられる順方向バイアス. |
IR | 逆電流 | 定められた条件下(Tj等の条件)においてダイオードに逆方向に規定の電圧を印可したときに流れる逆方向の電流範囲を規定しています. |
Cj | 接合容量 | 定められた条件下(Tj ,VR等の条件)においてダイオードに逆方向に規定の電圧を印可したときにPN接合部に形成される空乏層を介した静電容量の範囲を規定しています.
機構上寄生する静電容量も含んで規定されている場合が一般的です. |
trr | 逆回復時間 | メーカの定める条件下(Tj ,系等の条件)における逆回復時間の規定.
一般にメーカによって系や測定の細かい条件が微妙に異なるのでメーカ別の比較が難しいパラメータです.本コンテンツ(詳細こちら)では,逆回復特性をスイッチのON/OFF状態にたとえ,このスイッチのon時間を逆回復時間としています.一般にこのパラメータはSPICEモデルにおけるTTに相当します.そのため,各メーカでSPICEモデルを公開している場合は,TTを比較することで逆回復特性の比較が可能です. しかし,SPICEモデルについてはメーカ保証されない場合が多いので注意が必要です. |
表3-2-6 ダイオードの電気的特性