トランジスタの増幅機能2

物体に流れる電流は,物体中のキャリアの電荷密度に比例し,さらにキャリアの移動速度に比例します(詳細はこちら参照).エミッタ − コレクタ間に流れる電流についても同様です.


図3-3-9 ベース部のキャリア濃度

(1) キャリア濃度(電荷密度)に比例.トランジスタの場合,3極(エミッタ,ベース,コレクタ)のうちベース極の障壁部のキャリア濃度が最も小さくなります(詳細はこちら参照).そのためエミッタ − コレクタ間電流を考える場合,このベース極部のキャリアに着目します.このキャリア濃度は,VBEによって大きく可変できますので,E-C電流に対して影響が大きいと言えます.

(2) 一方キャリア移動速度は,一般に物体中の電界の大きさに比例.トランジスタの場合,?に記載を踏まえベース障壁部のキャリア速度を考えます.ベース極部の電界(電位勾配)は,ベース部の抵抗率×エミッタ電流に関係するパラメータとなります.一般的には,ベース極(コレクタ,エミッタも同様)の半導体は抵抗率が低く設定されていますので,エミッタ − コレクタ間電流を考える上では影響が小さいと言えます.

上記から,(1)の要素がエミッタ − コレクタ間に流れる電流 ICに与える影響として大きく,ベース極のキャリア濃度の関係がイメージできたと思います.この関係をもうちょっと整理すると,ベース極のキャリア濃度をρ[C/m3]とすると

   式3-3-2 IB:ベース電流[A]
IC:コレクタ電流[A]
ρ:キャリア密度[C/m3]

式3-3-2の IBとキャリア密度の関係は前記(こちらを参照)の通り比例関係にあり,ICに関しても上記の通り比例関係にあります.よってIBICの関係も次式のように比例関係になります.

   式3-3-3 IB:ベース電流[A]
IC:コレクタ電流[A]

ここでコレクタ電流 IC(コレクタ − エミッタ間に流れる電流)とベース電流 IBの関係を比例定数hFEを使って上式を示すと

   式3-3-4 IB:ベース電流[A]
IC:コレクタ電流[A]

ここで定義している比例定数 hFEをトランジスタの直流電流増幅率といいます.

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