トランジスタのミラー容量
トランジスタのような増幅機能を持つ素子と,入出力間に寄生するコレクタ容量のように,増幅器とコンデンサによって帰還する関係を持つ素子は,トランジスタに限らず,FET,MOS-FET,IGBTなど多く存在します.
単一素子でありながら,既にフィードバックを形成しているのは,多くの部品との関係で一般に計算が複雑になります.そこで,この帰還コンデンサを等価的に帰還しない別の場所に移動できないか?という発想に基づいて考えていきます.
次の図のように,増幅器と帰還コンデンサとで構成される一般系を考えます.あくまで一般的な話としてトランジスタそのものとは異なります.
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図3-3-25 増幅器と帰還コンデンサとで構成される一般系
増幅器A は電圧増幅器で入力インピーダンスを∞Ωとします.
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式3-3-15 |
ここから,入力インピーダンスVin(s)/Iin(s)を求めると(計算過程はこちら)
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式3-3-16 |
交流回路等でよく使用するjωを用いて(式3-3-16の伝達関数をフーリエ変換すると)上記の入力インピーダンスを示すと(sとjωの関係はこちらで解説しています)
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式3-3-16a |
入力側から図3-3-25の系を見ると,式3-3-16のようにC(1+A)のコンデンサが並列に接続されている状態と等価になります.よって図3-3-25の系は次の等価回路に置き換えが可能です.
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図3-3-26 帰還コンデンサとミラー容量の等価回路
図3-3-26のC(1+A)のように,帰還コンデンサCが等価的に(1+A)倍に入力側から見える現象をミラー効果といいます.また,このC(1+A)をミラー容量といいます.
トランジスタの場合,下図3-3-23の系に対して式3-3-12の関係があることを説明しました.詳細はこちら
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図3-3-23 コレクタ容量Cobと系
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式3-3-12 |
Cob:コレクタ容量[F] iB:ベース電流[A] R:コレクタ側抵抗[Ω] Vp:直流電源[V] vR:抵抗R端電圧[V] hFE:直流電流増幅率[倍] |
式3-3-12から図3-3-23トランジスタの伝達系は,一次遅れの系であることがわかります.一般に一次遅れの系というと多くのシステムがありますが,抵抗,コンデンサで構成される一次遅れの系というと,次に示すCR Lowパスフィルタの系があります.
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図2-3-11 伝達回路例(CRフィルタ)
↓
R(s) | → |
伝達関数![]() 式2-3-11 |
→ | C(s) |
ということでやや強引ではありますが,式3-3-12と式2-3-11のC,Rの関係を関連づけてみます.RはそのままR,CはCob(1+hFE)として直流(比例)ゲインR hFEを直列に設置すると
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図3-3-27 コレクタ容量Cobのミラー容量と等価回路
式3-3-12の伝達関数は次の図3-3-27のように等価変換できます.ここでコレクタ容量Cobに着目すれば(1+hFE)倍の容量が等価的に出現し,前に述べたミラー効果がこの等価回路の中にも現れています.