ツェナーダイオードとノイズ

ダイオードに逆方向バイアスを与えた際に,バイアスによる電界によってアクセプタから電子の電離(アバランシェ降伏)が始まると,その電離した電子(およびホール)はキャリアとなって移動します.

このキャリアの移動を位置エネルギーの立場からみると,もともと高い位置にあったキャリアは低い位置に移動したことになります.ここで失った位置エネルギーは最終的にはほとんど熱に変化します.

しかし,そのエネルギーが熱に至る過程では,様々な仕事をすると思われます.その仕事の一部は,他のアクセプタに対しても働きかけて,電子の電離に使われるものがあります.


図3-2-11はある電源からツェナーダイオードを用いて降圧している回路です.


図3-2-11 ツェナーダイオードとノイズ

図3-2-11のように抵抗を介して電源に接続した系は,電圧の安定化(定電圧化)に使われます.

アバランシェ降伏における,キャリアの位置エネルギー移動にともなってキャリアを生む現象:電子なだれ(アバランシェ降伏)によって,ダイオード内ではキャリアが過多となり,単純にインピーダンスが低下します.これによってダイオード本来のVz(ツェナー電圧)よりも低下する場合があります.

たとえば図3-2-11のような系では,降伏によるインピーダンス低下によってダイオード端の電圧を下げることになります.すると空乏層内の電界も下げることになるのでアクセプタからの電子の電離(アバランシェ降伏)が起こりにくくなります.そのため,ダイオード内のキャリアは減少し,ダイオード本来のVzに回復します.(ただ,ダイオードに寄生するL,Cにより過渡的にVzを越える場合もあるかもしれません.)

このようにして,アバランシェ降伏は,定常的にインピーダンス変化の振動をともなっています.図3-2-11の系の場合は,Voの電圧がダイオードのツェナー電圧Vz 近くで振動することになります.その振動は,時間的な規則性のあるものではなくランダムです.半導体のつくる代表的なノイズになります.

ツェナーダイオードがつくるノイズは,アバランシェ降伏によるものなので,ノイズ源としてはインピーダンスが非常に低いことが特徴です.ここら辺は理屈として知っておくことが大切です.一般的にやらないと思いますが,ツェナーダイオードに並列にコンデンサを接続してもノイズ対策に対する効果は望めません.(電圧振動が電流振動に変換,あるいはノイズの低周波化などノイズのモードが変わります.)

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