トランジスタの静特性
トランジスタを用いた回路設計では,トランジスタ単体としての動作を理解しておくことが重要です.図3-3-10のトランジスタ系においてVCEおよびIBのバイアスとICの関係について解説します.
図3-3-10 トランジスタ動作の系
一般に市販されているトランジスタのVCE,IB,ICの関係は図3-3-11に示す特性があります.
図3-3-11 トランジスタの静特性
図3-3-12 hFE - IC 特性
コレクタ電流を決める要素は,エミッタ極−コレクタ極間のキャリア濃度,障壁電位差,抵抗率など多くの物理パラメータが介在しています.たとえば,図3-3-11では,VCEの増加とともにICが増加する特性は,抵抗成分による影響と読みとることができます.また,図3-3-12では ICの小さい領域およびTj変化では,エミッタ極−コレクタ極間の障壁電位の影響,ICの大きい領域では,ICの大きさに対するキャリア濃度上限が相対的に影響を与えていることが読みとれます.
しかし,回路設計の現場では,これらの物理パラメータをhFEの中に集約してある変動幅を持ったパラメータとしてあつかうことが一般的です.そのようにして,前述したベース電流 IBとコレクタ電流ICの次式の比例関係(詳細こちら)からシンプルに設計していきます.
式3-3-4 | IB:ベース電流[A] IC:コレクタ電流[A] |
ここでは,トランジスタ回路設計にあたってhFEの変動を設計に織り込む必要があることを知っておきましょう.
たとえばトランジスタによる増幅器を設計で入出力間の増幅率(ゲイン)を設定する場合など,自己帰還によってhFEの変動を吸収するような設計など.あるいは,サチレーション領域を使ったスイッチ用途の場合等は,図3-3-10のような開ループのまま,単にIBおよびICをhFEの適正範囲になるよう設定するなど.これら詳しくは後述したいと思います.