ラプラス変換の意義
前のセクションでは何とか微分方程式を解きましたが,微分方程式の解法は様々な方法がありますが,工学的に一般的で回路設計/制御分野に応用範囲の広いラプラス変換という方法がありますので紹介していきます.
ラプラス変換はCR回路などの微分方程式の数学的な解法にとどまらず,制御工学や信号数学や数値解析・分析などに応用されます.その分野はアナログ回路においては位相補正,フィルタ,アナログ制御,振動発生/抑制回路,信号解析/変換など,...機械分野においては振動発生/抑制,機械制御など,...土木分野においても同様で振動における強度設計など,...また,経済分野においても数値予測など意外とも思えるような分野にも利用されています.
このラプラス変換のセクションでは,簡単な受動部品を組み合わせた過渡に関する解法によってラプラス変換を利用していきます.先のセクションでも解いたように過渡現象を解くだけであれば必ずしもラプラス変換を使う必要はありません.しかし,ラプラス変換は(線形)フィードバック理論の基礎となる電子回路の肝に関わる重要な要素になります.
たとえばオペアンプを使ってあるパラメータを定値制御するような場合,すぐにフィードバックに関する技術を必要としてきます.電源なんかをつくる場合においても安直にフィードバック・ゲインなどを設定することはできません.たとえば負荷の種類が抵抗なのかコンデンサなのかコイルなのかあるいはそれらの組み合わせなのかによって全く設計の根拠が変わってきます.
本サイトでは,フィードバックに関する設計を支援するツールを提供しています.→(伝達関数関連,フィードバック関連,オペアンプ関連)
このようにある程度理論に基づいた設計をしなければ,条件によって動作をしたり動作しなかったりという状態になりかねません.その理論に基づく設計,理論構築の入り口がラプラス変換になります.
ラプラス変換を必要とするのはアナログの回路屋だけかというとそうではありません.ごく普通のデジタル配線にもHI/LOの過渡において様々な波形がつくられています.また,そこに多くのトラブルの芽が潜在的に存在していることもご存知のことと思います.そうしたHI/Lo過渡時の波形・挙動も実はラプラス変換などの手法を駆使して過渡の波形をきっちり設計し未然にトラブルを抑制しておくことができます.