誘電体
式1-4-8中にあるε0 は真空の誘電率といって,静電誘導作用のし易さ すなわち電界の伝え易さを示すパラメータです.先に求めた平行極板コンデンサの静電容量は真空条件における値となります.
このコンデンサを構成する2枚の平行極板の間に絶縁物質を挿入すると,その物質のもつ特有の誘電率(静電誘導作用のし易さ)の変化によって極板間の電界の伝え易さが変化します.それによってコンデンサの静電容量を変化させることができます.その物質の誘電率は式1-4-9 のように示されます.
ε=εs·ε0 | 式1-4-9 | 物質の誘電率:ε[F/m] 比誘電率:εs[ 倍] 真空の誘電率:ε0[F/m] |
物質の誘電率εは通常,真空の誘電率に対する比によって示します.この比を比誘電率εs といいます.このような静電誘導作用を目的とした物質を誘電体といいます.
一般的に誘電体には絶縁物質が使用されます.原子は,通常中心に原子核がありその周囲を電子が周回しています.誘電体の原子は,電界を与えると電子の周回路がずれる現象があります.電界を与える前は電気的に中性ですが,電界を与えると電界の方向と反対向きに電子の周回路が電界の電気力を受け偏り電極対ができます.これを分極といいます.
この現象は原子,分子レベルだけではなく誘電物質全体におよび,誘電体を構成するすべての原子,分子が分極することで電界の方向に誘電体の端面が分極によって電極対があらわれます.これによって極板近くに極板のもつ電荷と極性の反対の電荷が集まります.すると,極板電荷に対して電気力を作用し引力が働き,電荷が帯電しやすくなります.こうして誘電体を平行極板に挿入することで平行極板コンデンサの静電容量を増加することができます.