光電効果とダイオード
図3-2-18 は原子核に周回する電子軌道のエネルギー準位を図示しています.原子に対して,光,熱などのエネルギーを与えると原子核を周回している電子が励起(高いエネルギー準位に移動)される場合があります.反対に高いエネルギー準位に位置した電子が低い位置に移動した場合,電磁波(光)や熱などのエネルギーを放出します.
図3-2-18 原子のエネルギー吸収と放出
特に光エネルギーに関する原子によるエネルギーの吸収,放出を光電効果(2) といいます.具体的に身近な例で示すと,金属を高温に熱すると(赤く)光を発する現象があります.これは熱によって金属原子に周回する電子が励起(励起された電子を熱電子という)され,この熱電子が再び,低いエネルギー準位に落ちることによって光エネルギーが放出される現象です.
この光電効果を応用した製品には,電子の照射によって光を発する放電管(ディスチャージランプ)などの照明器具があります.こうした光電効果は金属ばかりではなく半導体においても同様に起こります.
図3-2-19 ダイオードの通電と光電効果
図3-2-19は,ダイオードに順方向にバイアスして通電している状態のエネルギー構造を示しています.ダイオードの通電は自由電子とホールの移動により行われますので半導体内では,自由電子とホールが出会い結合することがあります.
そのとき,自由電子が位置していたポテンシャル(位置エネルギー)が何らかの形でエネルギーの放出がなされます.そのエネルギーの一部(または多く)は,先に記した光電効果による発光現象が起こっています.
この発光現象に特化した半導体デバイスが発光ダイオード(LED)です.
図3-2-20はPN接合ダイオードに逆方向バイアスを与えたときのエネルギー構造を示しています.一般にPN接合ダイオードに逆方向バイアスを与えたときにはほとんど電流が流れません.
ここに先ほどのLEDとは反対に,半導体への光子の照射を考えます.
図3-2-20 光電効果による
原子に光が照射されると,光電効果によって光電子が励起されます.この光電子はキャリアとなり電気伝導を促進します.たとえば,図3-2-20のように逆バイアスを与えられたダイオードでは,外部からの光によって,電気伝導性をコントロールすることができます.
この例のような受光によるインピーダンス変化を応用した素子がフォトダイオードです.