ドーピング
表3-1-1 は元素の周期律表を示しています.半導体としての特徴をもつ元素は価電子を4個もつ構造をしています.価電子を4個もつ元素は,周期律表では14族に配置されています.現在,一般に半導体として使用される元素はSi (シリコン)およびGe(ゲルマニウム)です.これらの元素によって構成される純粋な半導体結晶(真性半導体)は,常温域において熱励起によるキャリアの濃度が低いため電気抵抗が大きくほとんど電気伝導しません.しかし,これらの真性半導体に不純物を少量添加することによってキャリアを作ることができます.不純物添加によってキャリアを作ることをドーピングといいます.
図3-1-11 ドーピングによってつくられるキャリア
図1-3-10 は純粋な半導体結晶の中に,不純物として13族の元素または15族の元素をドーピングした際の結晶モデルです.13族の元素は価電子を3個,15族の元素は価電子を5個もつ特徴があります.
そこで同図の左に示す価電子を3個をもつ不純物元素は周囲の半導体元素と共有結合するための価電子が1個不足します.そのため結晶中に電子が充填されない箇所がつくられます.この不足した電子の位置には不純物である13族元素からの電子への斥力が電荷のバランス上からの働き,また共有結合からは結晶構造上引力が働きます.通常は不純物元素からの電荷バランスによる拘束力の方が強く自由に移動はできません.しかし,電界が与えられると共有結合からの引力が手伝って簡単に移動が可能となりそれはホール(キャリア)として働くことができます.このようにドーピングによってホールをもつ半導体をP型半導体といいます.
つぎに図3-1-10(右)に示す価電子を5個をもつ15族元素の不純物は,周囲の半導体元素との共有結合に価電子1個が余ります.そのため結晶中に電子が存在する箇所がつくられます.この余剰電子の位置には不純物である15族元素からの余剰電子への引力が電荷のバランス上働き,また共有結合からは結晶構造上斥力が働きます.通常は不純物元素からの電荷バランスによる拘束力の方が強く自由に移動はできません.しかし,電界が与えられると共有結合からの引力が手伝って簡単に移動が可能となりそれは自由電子(キャリア)として働くことができます.このようにドーピングによって自由電子をもつ半導体をN型半導体といいます.