OKAWA Electric Design

キャリア

真性半導体に熱などのエネルギーが与えられると価電子が伝導帯に励起され,その電子は自由電子となり,同時に価電子帯では電子を失います.このようにして価電子帯に電子の不足部分ができます.その電子の欠損部をホールまたは正孔といいます.

自由電子およびホールをもつ真性半導体に電界を与えると自由電子はプラス電位の方向に移動し,ホールはマイナス電位の方向に移動します.


図3-1-7 ホールの移動

ここでホールの移動について考えます.ホールは,本来Si(シリコン)原子の核電荷(プラス)と周回する電子の総電荷量バランスが均衡している状態より,励起により電子が不足していることで原子の電気的なバランスはプラスに偏っています.そのためホールは擬似的に正電荷のように働き周囲に存在する電子に対し引力を働きかけます.周囲の電子に働く引力はその電子が既に拘束されている原子の方が距離的に近いためホールから受ける電気力より大きいため自由にホールが移動することはありません.

この状態に外部から電界を与えられるとホール(プラス電荷)の周囲に存在する電子に対して既に働いている電気力に加え,電界からの電気力がさらに加えられホール周囲の電子は弱い電気力でも動くことが可能になります.その様子は図3-1-7 に図示しています.ホール周囲の電子が次々に位置を変えちょうどホールが電界方向に移動するように見えます.

このように半導体での電流の流れは伝導帯の自由電子または価電子帯のホールによって電荷が運ばれることによって行われます.このような自由電子およびホールのように電荷を運ぶ存在をキャリアと呼びます.