電源
向かい合う平行な極板にそれぞれ正と負の電荷が帯電している状態で,その極板間に電荷の移動がある場合を考えます.このような条件では,電荷の移動によって両方の極板の電荷は時間とともに減少していきます.
このとき極板の電荷を一定に保つには,電荷を供給する装置が必要となります.このように電荷を供給する装置を電源といいます.電源は電圧,電流を供給するエネルギー源です.図1-1-10 は平行極板に電源を接続したモデルです.この電源は一定電圧を供給します.そのため極板間の電位は一定(電荷の位置エネルギー)が一定となるため電荷量も一定に保たれます.
電子回路に用いられる電源は装置駆動のためのエネルギー源として使用されます.電源には様々な種類が存在します.乾電池などの化学電池やAC 商用電源やインバータ,コンバータなどの電子制御された電源などです.そのような電源を大まかに分類すると表1-1-1 のようになります.表1-1-1の交流電圧源は単相交流として記述しています.交流電源は三相交流として使用される形態もあり,プラントなどで使われる大型のものやブラシレス同期モータの駆動用電源などに用いられます.
直流電圧源は多くの電子回路の駆動用エネルギー源として使用されます.商用電源を電力ソースとして用いる電子機器も交流を直流に変換して使用されるケースが一般的です.
リアルワールドで使用する電源は,使用条件や環境によって電圧が変化したり波形が歪んだりすることがあります.たとえば供給電流の変動や,温度条件の変化によります.しかし,表1-1-1の回路記号を記載した場合,物理学や電子回路のルールではどのような条件においても規定の電圧波形を出力する理想素子として扱います.
電源にはエネルギー源として使用される方法の他,電源から得られる電圧などの情報を取り出して使用される場合があります.たとえば,直流電源は回路の基準電圧として使用したり,交流電源ではオシレータ(発信器)としての利用方法があります.このように情報源として利用される電源を信号源と言います.こうした信号源は主に理論図などに用いられ,ブロック図や等価モデル等の中に度々登場します.ただし汎用製品の回路で信号源を内蔵させる場合にはその機能をさらに細かく展開して表現されることが一般的です.